売り物は品物にあらず (ビジネス発想源より)

またまた
ビジネス発想源のメルマガより。

深い。

説得力がある。

 

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【第4095回】売り物は品物にあらず
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例えば、ある町で花を売ろうとしても、
その町には花屋さんはたくさんあるとしたら、
この町では、もう花は売れないのでしょうか?

決して、そんなことはありません。

他の花屋さんよりも、かわいいブーケを作れる、
独特のアレンジメントができる、
という花屋さんにはお客様が集まるでしょう。

1時間前からでもスマホで配達を依頼できて
すぐに自宅に届けてくれるようなサービスも
また必要とされるかもしれません。

つまり、その商品がそこにはたくさんあると言っても、
売れないということはありません。

正確に言えば、商品がたくさんあっても、
「売るものは商品だけではない」
ということです。

花という同じ商品を扱っていたとしても、

アレンジメントのデザインを売る、
即時配達という便利さを売る、
ラッピングのかわいらしさを売る、
店内の毎月の花飾りの提案を売る、
生け花教室というノウハウを売る、
ガーデニングという欧州の文化を売る、
花言葉とかけた祈願を売る、

などなど、「売るもの」は「花」以外にも
いくらでもあるのです。

これらを小難しく言い表せば
ビジネスモデルやビジネスチャンスといったものに
なるわけです。
江戸時代に、滋賀県から行商に出かけた
野田六左衛門という若き近江商人は、
中山道を通って江戸に向かいました。

その途中で、上州の板鼻宿(群馬県安中市)に
到着するのですが、この板鼻宿というのは、
碓氷川の手前ということで賑わっていて、
中山道の中でも屈指の大きさの宿場町でした。

それだけにぎわっているのですから、
あらゆる品物があらゆる店に揃っていて、
普通の行商人ならば「この町にはもう、
新参者には売れるものはない」と諦めて、
商売の場を他に求めます。

しかし、野田六左衛門は、
夜に灯りとして使うろうそくを1本買いに行っただけで、
「ああ、この街でたくさん売れるものがあるなあ」
と見抜いて、ここで商いをすることに決めます。

野田六左衛門は、板鼻宿で酒屋を開くのですが、
飛ぶように売れて店は大繁盛し、
町内屈指の大富豪へとのし上がっていったのです。

でも、野田六左衛門はろうそく1本を買いに行って
「酒が売れる」と思ったわけではありません。

宿場町には既に酒屋さんはたくさんあって、
十分に街のニーズを満たしていました。

では野田六左衛門には、どんなことを見て
何が売れると気づいたのか。

それは、ろうそくを1本買いに行くと、
どの店も、1本しか買わない自分を後回しにして、
まとめ買いをする後のお客ばかり接客することです。

そんなはしたの買い方のお客はぞんざいに扱って、
取り扱い量が多いほうばかりにペコペコする。

それがこの街では当たり前の風習だったので、
「なんだ、この街には『親切』は売っていないな」
と気がついたわけです。

そこで、野田六左衛門は開業しやすかった酒屋を開き、
少量しか購入しないお客様にも誠心誠意に接し、
「あのお店はこの街では一番親切だ」
という評判が立って繁盛していったのです。
売るものとは商材そのものだけではないし、
また自分の本業とは異なる分野の商売からも
そのヒントがいくらでも得られる、

ということが分かるエピソードではないでしょうか。
自分の商売は、何を売っているのか。

商品名やサービス名だけではない、
自分たちならではの「売り物」が、
必ずどこかにあるのです。

自分たちが誇りとしている「売り物」、
そしてこれから手に入れたい「売り物」には、
どのようなものがあるでしょうか。

(ビジネス発想源 より)