ある起業家はこう言った。
「これから社会的安定もなく、どうなっていくか不安」
ある会社員はこう言った。
「これからこのレールに乗っかったまま時が過ぎていくことに不安」
どちらもそうだなと思う。
起業家の不安は一般的だし、なんでもできる期待もあれば、
どうなっていくかという不安も抱えながらやっていくのは、
受け入れられやすい感覚。
会社員のほうを補足すると、これは厳密には役員クラスの人。
そんな人でも、レールに乗っかったまま自分がどうなっていくのか、
そのレールの中で時だけがどんどん過ぎてしまう不安。
一見出世コースの人でもこんな感覚に襲われる。
起業家であれ、会社員であれ、
種類こそ違えど、抱える不安は、みなあり、
言い表わせない底の深い不安に急に襲われることもある、ということ。
起業家は自由、会社員は窮屈。
起業家は不安定、会社員は安定。
そういうことではない。
だから一概に比べることすらおかしくて、
同じ天秤にかけるべきでもない。
不安もあり、期待もあり、夢もあり、落胆もあり。
どちらも同じだろう。
もし同じものさし、同じ質問ができるとしたら、
・今の仕事は楽しいか?
・今の仕事は誰を喜ばせているか?
・今の仕事は自分を成長させてくれるか?
・今の仕事はどんな未来を見せてくれるか?
これらの質問であれば、
「起業家」「会社員」という肩書や体裁など関係ないところで、
「仕事人」として問うことができるだろう。
だから、もし比べるなら、天秤にかけるなら、
表面的に見えているところや、一般論でなく、
こういった内面を掘り下げた良質なはかりにかけるべきだろう。
それぞれの良い所・悪い所を列挙するのはいいけれど、
それは並べるところまで。
土俵も違うのに、並べたものを同じ土俵にあげようとするから、
比べようとするから、戦わせようとするから、
訳がわからないことになってしまう。
結局は自分自身が「今の自分の仕事」をどう位置づけているか、
どういう意味を見出しているか、どういう未来を見ているか。
それだけだと思うし、それだけでいいと思う。