読書:「羊と鋼の森」宮下奈都

2015年本屋大賞を受賞した

「羊と鋼の森」/宮下奈都 です。

 

まったくの予備知識なく読みました。

ピアノ調律師のお話なんですね。

 

羊は、ハンマーのフェルト部分

鋼は、張られた弦

つまり「ピアノ」のことです。

 

とてもいい作品でした。

読み終わったあとの

心が温かくなるような気持ち。

 

女性作家らしいディティール表現、

人物描写や内面描写が、

素晴らしいなと思いました。

 

ふだんは、読書後、

あまり本を手元に残さないのですが、

この本は本棚に並んでいます。

 

とても気に入った節があったので、

またいつか読み返したい、

そんな作品です。

 

羊と鋼の森 ピアノ

 

いくつか印象に残った

とっておきの場面を。

 

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和音はピアノの練習をどれだけやっても苦にならないらしい。「いくら弾いても、ぜんぜん疲れないんですって」佐倉さんはそう言って目を細めた。「そんなに練習できるというのは、それだけで才能ですね」柳さんが相槌を打っていた。ほんとにそうだと思う。和音が何かを我慢してピアノを弾くのではなく、努力をしているとも思わずに努力をしていることに意味があると思った。努力していると思ってする努力は、元を取ろうとするから小さく収まってしまう。自分の頭で考えられる範囲内で回収しようとするから、努力は努力のままなのだ。それを努力と思わずにできるから、想像を超えて可能性が広がっていくんだと思う。うらやましいくらいの潔さで、ピアノに向かう。ピアノに向かいながら、同時に、世界と向かい合っている。僕にはするべき努力がわからない。わからないから手あたり次第になってしまう。~
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僕には才能がない。そう言ってしまうのは、いっそ楽だった。でも、調律師に必要なのは、才能じゃない。少なくとも、今の段階で必要なのは、才能じゃない。そう思うことで自分を励ましてきた。才能という言葉で紛らわせてはいけない。あきらめる口実に使うわけにはいかない。経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。もしも、いつか、どうしても置き換えられないものがあると気づいたら、そのときにあきらめればいいではないか。怖いけれど。自分の才能のなさを認めるのは、きっととても怖いけれど。「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似てる何か。俺はそう思うことにしてるよ」柳さんが静かに言った。
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みんな同じなんだ。

みんな同じ思いなんだ。

みんなもがいているんだ。

そして、無我夢中に、

一筋の光を追いかけている。

 

そんな勇気をもらえる一冊です。

音楽の特殊な壁というよりも、

どんな職業や経験にも通じる、

ひたむきで心温まる、

かつリアリティに即したストーリーです。

 

10代には夢を

20代には勇気を

30代には初心を

40代には転機を

50代には回帰を

60代には郷愁を

 

そんな贈り物を届けてくれる

物語だと思います。

 

ぜひ、秋の夜長に、

ピアノの音色をBGMに。(^^)♪

 

羊と鋼の森 装丁

 

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