読書:「おとなの教養」 池上彰

そのわかりやすい伝え方で、
TVをはじめとしてメディア各界で活躍する池上彰さん。

過去にも複数読んだことがあったけれど、
今回のテーマはすごぶる内容がよかった。

「おとなの教養」 / 池上彰 著

博学だからこそできるまとめかた。
それは歴史の時系列であったり関連性であったり。

きれいにひとつのテーマで、
散らかったパズルのピースをはめていき、
それを埋めていく作業が、
理解度を深めていく過程に似ているよう。

そしてパズルは完成する。
そしてそのテーマの理解度はあがり、
自分のなかで腑に落ちるという地点へ辿り着く。

そんな本の読み方をした気がする。
そんな充実感と達成感を味わえる本。

しかも語り口は専門家ではなく、
誰でもわかりやすいように、が貫かれているので、

言っていることが難しくてわかない、
と思う大人はいないだろう。

 

どんな分野、どんなテーマが書かれているかというと、
目次をみてもらえば一目瞭然。

[目次]
序 章 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?――現代の教養七科目

第一章 宗教――唯一絶対の神はどこから生まれたのか?
・ユダヤ教とキリスト教の違い
・「旧約」と「新約」とはどういう意味か
・イスラム教の終末観
・宗教紛争の本質 etc

第二章 宇宙――ヒッグス粒子が解き明かす私たちの起源
・天動説から地動説へ
・キリスト教は地動説を認めなかった
・「ビッグバン」は悪口だった!?
・ヒッグス粒子はなぜ大発見なのか? etc

第三章 人類の旅路――私たちは突然変異から生まれた
・進化=進歩ではない
・突然変異とはどういうことか
・ダーウィン進化論の衝撃
・はるか昔の年代の調べ方
・人類移動のルート
・ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの違い etc

第四章 人間と病気――世界を震撼させたウイルスの正体
・吸血ダニとの格闘から花粉症は生まれた
・現代的な生活がつくる病
・「インフルエンザ」の語源を知っていますか?
・スペイン風邪の猛威
・ウイルスの突然変異 etc

第五章 経済学――歴史を変えた四つの理論とは?
・近代経済学の父アダム・スミス
・「見えざる手」とは何か
・カール・マルクスの「労働価値観」
・社会主義の失敗
・「ケインズは死んだ」
・新自由主義は格差を拡大させた etc

第六章 歴史――過去はたえず書き換えられる
・なぜ四大文明は歴史に刻まれたのか
・「歴史の真実」は変わる
・歴史は権力によって書き換えられる 北朝鮮と韓国の例
・政治的意図による歴史づくり 中国の例
・「東京裁判史観」と「大東亜戦争」 etc

第七章 日本と日本人――いつ、どのようにして生まれたのか?
・「日本」という名前の由来
・ニッポンかニホンか
・「日本人」は1873年に誕生した
・国家意識はいかにつくられるか
・健全な愛国心とは何か
・メイド・イン・ジャパンは「安かろう、悪かろう」の代名詞だった
・海外で愛されるニホン
・韓国・中国と東南アジアの違い
・他者との関係から自分・自国を認識する etc

 

おさえておきたい分野ばかり。

そしてもしかしたら学校で習ったことがあっても
すでに忘れかけているようなことも、

大人の教養として再度嗜むことができる。

 

例えば、

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の誕生と、
その神は同一だということ。

昔の年代の調べ方は化石にふくまれる炭素から
その割合の式にて計算している。

なぜ人類誕生はアフリカからなのか?

地域のよって肌の色が違う理由、
そして地域環境ごとに変化している遺伝子。

アフリカの地域の人はマラリアにかかりにく遺伝子を持っているが、
その遺伝子は副作用として貧血になりやすいなど。

インフルエンザやスペイン風邪の真相。

中国農村部で新型ウイルスが誕生する理由は、
豚とともに生活しているから。(寝床ふくむ)

豚インフルエンザの患者数が最も多かったのは日本だが、
その真実は医療機関と保険制度の充実。
つまり患者が病院で診療をしっかり受けているので
患者数としてカウントされているということ。

病気が人類の歴史を大きく変えてきた。

第一次世界大戦を終わらせたのは「スペイン風邪」。
敵も味方もその流行でバタバタ兵士が死んでいった。

新大陸を発見したヨーロッパ人は、
一緒にヨーロッパの病原体を持ち込んだことになる。
そこで暮らしてきた人たちは免疫がないので、
どんどん死んでいき、移動してきたヨーロッパ人たちは、
自分たちは神から選ばれた者だと思い定住拡大した。

実態は、地域ごとの遺伝子と病原菌の関係ということ。

「日本」という名前の由来。

ニホンかニッポンか、その違いと使い分け。

 

ほかにもたくさん目からウロコな大人の教養がたくさん。

教科書には載っていなかった、
誰も教えてくれなかった、
けれど知っておいたほうがいい大切なことばかり。

雑学と呼んでは失礼かな、
一般教養として、おとなとして、日本人として。

歴史の項には、中国、韓国、北朝鮮などとの
関係性や歴史的背景もしっかり書いてある。

なんで反日教育を彼らに刷り込まれているのか、など。

子供たちに対しては、
これをひとつの授業、教科書に認定してもいいんじゃない、
と思えるほどめんべんなく、そして公平な内容。

おとなが読もうが、こどもが読もうが、
立派な教養が培われるきっかけになると思う。

 

池上彰