読書:「愚者が訊く」 倉本聰

「北の国から」の倉本聰さん。

たまたまテレビで、
倉本聰さんの対談集の書籍が紹介されていて。

倉本聰2

それがこの本。

「愚者が訊く」 / 倉本聰

内容紹介を引用すると、

北海道・富良野の豊かな自然の中で環境教育活動を行なっている脚本家・倉本聰が、自然のあり方、ヒトの行く末、日本の未来について、
一流の専門家たちに恥も外聞も捨て、愚者として初歩的な質問をどんどん問いかける対談集。「誇りを捨てなかったら得られなかった」―― 珠玉の知識に溢れた一冊。対談相手はジャーナリスト・池上彰氏、ベストセラー『原発のウソ』の京大助教・小出裕章氏、地球惑星科学者で東大名誉教授・松井孝典氏など7人。

 

原発問題、政治、宇宙、昆虫などなど、
あらゆる分野の超賢人たちとの対談集。

飽きなかった。
知らないことばかりだった。

この本を読むと、
あまりにも自分が無知だということを痛感させられた。

もちろん、科学や経済など、
興味のあるなしの分野もあるだろうけれど、

原発のことなど、日本人として、
原発の歴史を知らなさ過ぎるということがよくわかった。

テレビやネットのニュースでは、
決して得ることのできない情報や知識がそこにあった。

それは裏情報とかマル秘という意味ではなく、
知っておかないといけないことを知らない。

今のメディアのニュースが
どれだけ瞬間的で浅いか、ということ。

 

どうなった、ああなった、何を言った、何をした、、、
今起きていることを実況しているだけ。

そしてどの媒体も同じことばかり。
取り上げることも、言っていることも。

そもそも?
なぜ?

そんな経緯や背景を全く伝えないで、
いい 悪い を問う。

あー、そんな国民の一人なんだな、と
自分を情けなくも思う。

無知すぎて、
そもそも自分が持っている情報や知識だけで、
「良い」「悪い」なんて言えない。

それがわかった。

だから日本人は、世論調査でも、
「良い」「悪い」ではなく、

「どちらとも言えない」という
都合のよい回答に集まるのだろう。

もちろん自分もそう。

判断するには、
自分の意見を言うには、
あまりにも知らなさ過ぎるから。

そんなことを考えさせられた本。

これをきっかけに、
数珠つなぎで、関連本を探せたので、

もっと興味のあるところから、
日常的に影響するところから、
そして未来にも関わってくるだろうところから、

知識を深め、
自分の考えも深めていけたらと思っている。

原発関連書籍と倉本聰さんの関連書籍を
さっそく注文したところ。

 

さらっとおもしろかったのが、ハチの話。

蜂の組織や、女王バチの誕生まで、
蜂の世界を専門家が語っている。

もうそれは人間界に匹敵するほどの
緻密で構築された世界なんだなと。

それはともかく、
蜂の巣。

本を読みながら目からウロコだった。

「蜂は丸のつもりで巣をつくっているんですよ」

蜂の巣は正八角形の巣穴の集合体。
でも蜂は円形の巣穴をこしらえている。

つまり円を密集させて集合させると、
均等にかかる力の関係上(科学?物理?かな)
正八角形が出来上がるらしい。

ちょっと感動した。

知らなくていいことだけれど、
知ると見方が変わる逸話だ。

 

原発問題で言えば、
導入部だけいうと、

震災前日本の電力における
原子力発電の割合は30%くらい。

原子力発電をやめる選択をするということは、
1980年代の生活に戻るということ。

つまり24時間営業などない街、
夜のネオンや賑やかしさのない街。

経済活動や消費活動にも大きく影響する。
つまり経済大国ではなくなることを意味する。

わかりやすく言ってしまえば、
今よりも貧乏な国になるということ。

これを国民として受け入れる覚悟が必要になる。

逆戻りしてもいいから、
今のいろいろな当たり前の豊かさを放棄してでも、
原発をとめたいか。

 

「1980年代の生活かあ」と正直考えてしまう。

豊かさを捨てることができるのか。
豊かさを捨ててマイナーチェンジした国は、
これまで先進国でどこにもない。

原発を放棄するということは、
他の電力に置き換えればいいじゃないか、ではなく、
国民生活としても犠牲や覚悟がいる、ということ。

やっぱりメディアの情報や議論は、
本質ではないということがよくわかる対談。

問題は深い、ということがよくわかる。

 

別の視点から見ると、
原発事故を起こしながらも、日本の輸出産業として、
原発輸出を推進している政府。

普通に考えて、なんで?と思う。
どんだけ面の皮の厚い国なんだと。

でも少なくともメディアでそんなことは聞いたことがない。

これはそもそも原発への発展してきた道が、
アメリカ政府ならびにアメリカ企業と密接に関わっている。

そんなことがあらゆる角度で深く述べられている。

 

過去も知らない、日本人。
現在も把握できていない、日本人。
未来を想像できない、日本人。

ヒトゴトではないんだなー。

 

倉本